はじめに ── AI が AI のためのコードを書く時代
「AI を使えばコードが書けなくてもアプリが作れる」
こんなフレーズ、最近よく耳にしますよね。正直、半信半疑でした。プログラミング経験ゼロの自分がトレードツールなんて作れるわけがない、と。
でも、やってみたら 本当にできてしまいました。
今回つくったのは、cTrader のチャート上に「ボタンを1つ」置くだけで、裏側で Gemini AI がリアルタイムの市場データを分析し、BUY / SELL / WAIT を判定してくれるインジケーターです。しかもコードを書いたのは私ではなく、ほぼすべて Claude。つまり AI(Claude)が別の AI(Gemini)を呼び出すツールを設計した という、ちょっと不思議な構図になっています。
この記事では、完成したツールの中身と、制作中にぶつかったハマりポイントを共有します。「自分もやってみたい」と思っている方の参考になれば嬉しいです。
完成したもの ── ワンクリックで AI がチャートを読む
仕組みはシンプルです。
- cTrader のチャート上に 「AI分析」ボタン を1つ配置する
- ボタンを押すと、現在の市場データ(価格、ローソク足、インジケーター値など)を自動で収集
- そのデータを Gemini AI に送信し、分析結果を受け取る
- 結果をチャート上にわかりやすく表示する
たったこれだけ。「今この通貨ペア、AI 的にはどう見える?」がチャートを眺めながらワンクリックで確認できます。
表示される情報
表示もただの BUY / SELL ではなく、トレーダーが判断材料として使いやすいように工夫しました。
- 売買判定(BUY / SELL / WAIT) ── AI が出した結論をシンプルに表示
- TP(利確)・SL(損切り)ラインの自動描画 ── チャート上に水平線が引かれるので、エントリー後のイメージがすぐ掴める
- 自信度バーグラフ ── AI がどれくらい確信を持っているかをパーセンテージで視覚化。60% と 95% では当然、ポジションサイズの判断も変わってくる
- 判断の根拠(日本語) ── 「上位足の上昇トレンド継続中」「RSI が売られすぎ圏から反発」など、なぜその判定になったのかを日本語で説明してくれる
最後の「根拠の表示」が個人的にはいちばん気に入っています。AIの判定をブラックボックスのまま鵜呑みにするのではなく、「なるほど、そういう見方か」と自分のトレード判断の補助として使えるからです。
開発の流れ ── Claude との共同作業
開発の進め方は、正直に言うと技術者が聞いたら笑うかもしれません。
- 「こういうインジケーターを作りたい」と Claude に伝える
- Claude がコード全体を生成してくれる
- cTrader にコピペして動かしてみる
- エラーが出たらエラー文をそのまま Claude に貼る
- Claude が修正版を出してくれる
- 3〜5 を繰り返す
文字にすると単純ですが、これで 本当にちゃんと動くインジケーター が完成しました。プログラミングの知識がなくても、「何をしたいか」を言語化できれば AI が翻訳してくれる。そんな時代が来ているんだなと実感しました。
ただし、すべてがスムーズだったわけではありません。いくつか「これは自分で調べないと分からなかった」というポイントがあったので、以下にまとめます。
ハマりポイント集 ── 同じ轍を踏まないために
① Gemini 無料枠の制限は思ったより厳しい
Gemini API には無料枠があり、最初は「1分間に15回(15 RPM)もリクエストできるなら余裕でしょ」と楽観的に構えていました。
ところが実際に使い始めてみると、2025年12月の仕様変更で無料枠が大幅に削減 されていることが判明。現在の上限はおよそ 10 RPM 程度で、しかもこれは理論値。実際にはバースト的にリクエストを投げると、あっという間に 429 エラー(レート制限) が返ってきます。
トレード中に「分析してくれ」とボタンを押して、返ってきたのがエラーメッセージ。これはかなりストレスです。
対策: ボタンの連打防止インターバルを 30秒 に設定。 前回の分析から 30秒 以内にボタンを押しても無視するようにしました。トレードの判断において 30秒 は長く感じるかもしれませんが、無料枠で安定運用するにはこのくらいの余裕が必要です。頻繁に分析したい場合は、有料プランへのアップグレードを検討してもいいかもしれません。
② Gemini 2.5 Flash は「思考モード」がデフォルト ON
これが いちばん時間を取られたハマりポイント でした。
Gemini 2.5 Flash は Google の最新モデルで、性能も良いのですが、デフォルトで 思考(Thinking)モードが有効 になっています。このモードが ON だと、AI が最終的な回答を出す前に「思考プロセス」をテキストとしてレスポンスに含めてしまいます。
今回のツールでは Gemini に JSON 形式で結果を返してもらう仕様にしていたのですが、思考モードが ON のままだと、JSON の前に AI の独り言のようなテキストが混ざり、パースに失敗します。
エラー: Geminiの返答からJSONを取得できませんでした
何度やってもこのエラーが出て、プロンプトが悪いのかと試行錯誤しましたが、原因はモデルの設定でした。
対策: thinkingBudget: 0 を設定して思考モードを無効化。 これだけで JSON が正常に返ってくるようになり、嘘のようにスッキリ解決しました。公式ドキュメントにも記載はあるのですが、最初から気づくのは難しいポイントです。
③ モデルは gemini-2.0-flash → 2.5-flash に移行しておこう
開発初期は gemini-2.0-flash を使っていたのですが、調べてみると 2026年6月に廃止予定 とのアナウンスが出ていました。
廃止後にツールが動かなくなるのは避けたいので、途中から gemini-2.5-flash に切り替えました。今から同じようなツールを作る方は、最初から 2.5 系を選んでおくのがおすすめです。切り替え自体はモデル名の文字列を変えるだけなので、手間はほとんどかかりません(ただし、上述の思考モードの罠には注意)。
使用動作動画
実際に動いている様子を動画にしました。ボタンを押してから数秒で AI の分析結果がチャート上に表示される流れを確認できます。
作ってみた感想 ── AI × AI の可能性
振り返ってみると、自分がやった作業は本当にシンプルでした。
- 「こういう機能がほしい」と Claude に説明する
- エラーが出たら Claude に相談する
- Gemini の API 仕様を調べてパラメータを調整する
コードそのものは Claude がほぼ全部書いてくれたので、私の作業は実質 「企画」と「テスト」と「トラブルシューティング」 だけです。
これまで「プログラミングができないとツールは作れない」と思い込んでいましたが、その壁は確実に低くなっています。もちろん、できあがったコードの中身を完全に理解しているわけではありません。でも、「何をしたいか」を明確に伝えられれば、AI がそれを形にしてくれる。これは間違いなく、個人トレーダーにとって大きな武器です。
AI が AI を呼び出すツールを、AI に作ってもらう ── ちょっとシュールですが、これが 2025〜2026年のリアルです。興味がある方はぜひ試してみてください。
免責事項・投資リスクについて
- 投資助言の否定: 本記事は筆者の個人的な見解や制作記録の紹介を目的としており、投資の勧誘や特定の銘柄・通貨ペアの売買を推奨するものではありません。
- 損失のリスク: FX(外国為替証拠金取引)は元本を保証するものではなく、相場変動により預託証拠金を超える損失が発生する可能性があります。レバレッジ取引のリスクを十分にご理解ください。
- AI 判定の限界: 本ツールの AI による分析結果は参考情報であり、将来の相場を保証するものではありません。AI の判定を過信せず、あくまで判断材料のひとつとしてご活用ください。
- 最終判断: 投資の最終決定は、必ずご自身の判断と責任において行ってください。